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民訴百選A6 相続財産管理人の地位−本当に意味のない議論?


民訴百選A6の判例きらい。
実質意味がある議論じゃないとか言われながら、けど、いつも基本的な理解が足りてないって思わせられる。民訴法上も民法上も。


まず、本件の民訴法上の問題は、相続財産管理人が自己を原告としてした訴えが適法なのか、不適法なのかということ。相続財産管理人はその相続財産に係る訴訟において当事者適格を有するのか、代理人にすぎないのか。確かに、どちらであろうと実際訴訟に出てくるのは相続財産管理人なのだから、当事者適格者だろうが代理人だろうが、それは法形式の問題にすぎないとも思える。

でもね、この問題を裏返すと、じゃぁ相続財産管理人以外の他の相続人の当事者適格はどうなるのかってことだと思わない?実のところ、この議論の実質的な意味ってここにあるんじゃないか、と思ったりする。

判決は、民法第936条2項の文言を根拠に、相続財産管理人が原告となって提起した訴えを却下している。理由は実体法上代理人とされる相続財産管理人を訴訟法上も代理人とすべきだからだろう。とすると、他の共同相続人の当事者適格が相続財産管理人に移転しているとは考えてないことになるね。そうすると、他の共同相続人に訴訟参加する途が残されていることになる。

ちなみに、相続財産管理人についての民法の規定はこれ。

民法第936条
1項
相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2項
全校の相続財産の管理人は、相続人のためにこれに代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。

2項の「相続人のために」「これに代わって」。
相続財産管理人を実体法上も訴訟法上も代理人とする根拠として、判例はこの文言を挙げている*1。確かに、2項の文言だけ見れば代理人ぽい。

だけど、1項には「相続人の中から」共同相続管理人が選ばれるってあるじゃん。
これを重視すれば、この条文は共同相続人から相続財産管理人への管理処分権の移転を規定したものともいえそうだよね。とすると、民法936条は、相続財産管理人の地位が法定訴訟担当であることを定めているとも読める。実際、民訴法124条1項1号には、相続財産管理人が「訴訟承継人」であることがはっきり規定されてるし。


こうやって、袋小路に迷い込んだときは原理原則に立ち戻って考えましょう。
民事訴訟法というのは、あくまで実体法上の権利の実現手段にすぎないのであって、実体法上の僕(しもべってこうやって書くんだ)なのです。とすると、そもそも相続財産というものがどういう性質のものなのか、そこから考えてみるべきよ、と。

相続財産の法的性質については、共有やら合有やらあったけれども、とりあえずそんな法的性質論は置いといて素直に考えてみる。すると、相続人同士なんて利害関係ありまくりなわけです。もう、自分の分け前を多くしよう多くしよう、血みどろのどろどろです。家族もへったくれもあったもんじゃありません。…おっとっと、もちろんそうでない家族もいっぱいいます。

要するに、なかよしこよしでこれからもみんなで持っていようね、ではない関係が多い。相続財産の共有(合有?)状態は暫定的なもので、分割されて単独所有に帰することが当然の前提となっている。そうするとね、相続財産管理人以外の相続人にも係属中の訴訟に関与させる必要があるんじゃないな、と思うわけです。んなら、相続財産管理人は共同相続人の代理人であって、法定訴訟担当とみるべきではない。判決が代理人としたほんとのとこってここにあるんじゃなのかな、と思ったりするのだけど、そうすると百選A6はほんとに意味のない論点なの?ん?


んで、脇に置かれた相続財産の法的性質なんだけども。これは民法上の問題ね。

当事者適格は原則として実体法上の利益帰属主体に認められるのだから、実体法上、相続財産の法的性質をどう考えるのかによっても影響を受けることになるはず。相続財産の帰属の仕方、これは共有なのか合有なのかね。
訴訟追行権に限っていえば、これを合有とすると、相続財産は各共同相続人に合有的に帰属することになって、固有必要的共同訴訟となるべきことになる?そうすると、この訴訟に疑義ある他の共同相続人は訴訟参加(52条)できることになるよね。そうすると、実体法上相続財産を合有と考える説からは、訴訟上も共同相続人は当事者適格者であって相続財産管理人は代理人とすべきとした方が素直かな?他方、これを共有と解するとどうなるだろう?本件は、少なくとも共有持分権の主張ではないだろうから(共同相続人全員vs相手方だよね)、共有としても結論は変わらないかなー。もやもや。
相続財産の法的性質って何なのか、遺産分割って何なのか、それから共有と合有もほんとよくわからんくなってくる。

ということで、ここらへんでうちどめ。


あ、あと気になるのが、原告が裁判所の釈明義務違反を主張してることなんだよねー。
釈明義務?これって訴訟要件具備の有無には妥当しないよね?…て思ったけど、当事者適格については、その具備の調査の開始は職権調査事項で、資料収集については弁論主義だったか!

でも、法人の代表者の話って当事者適格の有無の問題?
んー、ここもよくわからない。法人の代表者って訴訟上代理人となるんだろうけど(37条)、これは「法定」代理??37条が代表者に法定代理人の規定を準用するのは、本人である法人自体は訴訟追行できないからだもんね?そうすると、本人の訴訟能力の補充ということで法定代理人。あれ?でも、代表権の発生原因は、構成員が代表者として選ぶからなんだから、支配人とかと同じく法令上の訴訟代理人にならないかな。そうすると「任意」代理人だよね…。
実在説と擬制説がからんできますか?もしかして。

ぐあー。
HPもはや0。
教会にお金払って、生き返らせてもらわないと…
ところで、iphone版ドラクエ、100万人まで無料なんだね。
こんな興味深い記事があったよ。

ドラクエ1のiPhoneアプリが無料でもらえる理由が頭良すぎる件 - Rick08の日記

宣伝広告の力、すごいね。
それにかけた投資はやっぱり回収しないとね。著名ブランド保護しないとね。もんもん。
あ、今考えてる他のエントリの話だよ。



2013/11/29 16:09 追記。

当事者適格についての資料収集が弁論主義とされる理由は、当事者適格決定の基準が実体法上の利益帰属主体か否かであるために訴訟物の判断と直結するから。とすると、法人の代表者の代表権限に関しては、必ずしも訴訟物と関わるわけではない(構成員による選任手続の有効性如何によるから)ので弁論主義が妥当するとはいえなくなる。つまり、法人の代表者の代表権限の有無は、一般的な訴訟要件と同じく職権探知主義が妥当するでいいのかな。
…とすると、原告はなんで釈明義務違反を主張してるん??

*1:最(一小)判昭和47年11月9日