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There is nothing to writing. All you do is to sit down at typewriter, and bleed. - Ernest Hemingway

エクセル的アウトライナー論ー時系列を図化する

  • Fargoについて、以前のエントリの中で、Fargo独特の「画面の固さ」が感覚的にダメだと書いた。でも、先日、Tak.さんの「説明しながらアウトラインを書く」とそこで紹介されているDave Winerの動画を見て、またFago熱が再燃している。

  • Fargo哲学の一つに「出来事を時系列で記録していく」というものがある(たぶん。こちらをどうぞ)。そこで、試しに、自分のアウトライナーにもChronologyという項目を追加してみた。思いつきのメモや断片を、タイムスタンプをつけて時系列に並べてみる。

  • 初めは、日付ごとに項目を立ててメモを書いていたのだけど、発想の段階で階層化すると(たとえそれが一段階であっても)、メモの断片が埋もれてしまいそのまま死蔵するパターンが多かった。そこで、日付と時間はカラムという形でメモの横に付け加えることにして、発想の段階では、あえてテキストが平面的に表示されるようにしてみた。

  • そうすると、おー、並べ替えられるtwitterにちょっと近いじゃないかー!で、更に罫線も引いてみると、エクセルにもかなり近い。で、これを並び替えてみるとなかなか面白いのだ。断片のつなげ方というのがいくつもあるんだな、と改めて思う。他にも、覚えたいテキストを打ち込んでソートをかけたものを自分で並び替えられるか、とかやってみると、ゲーム感覚で暗記できたりもするぞ☺。

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  • エクセルとアウトライナーを合体させた形というのは、「アウトプットに最も近い絵」を画面上に再現してくれる。「図から文章への変換作業がつらいからここをどうにかしよう」というのが課題だったのだけど、これは一つの答えかもしれない。絵的な配置ではあるものの、一つ一つのノードは文章から成り立っているために、記憶とそのアウトプットの間の溝が埋めやすい。色もつけられるし☺*1 

  • ということに気づいたのは、実はここ2、3日のことだったりする。
    もともと事実の概要などの時系列順に出来事が書かれた文章を把握するのが苦手だった。その理由は、時系列で書かれた文章は階層化しにくいと思っていたから。アウトライナーに入力してみても段差がつけられない。これじゃテキストべたうちと同じなので、文章を「絵」的に把握できないんだもの。

  • …と思っていたんだけど、「民事法学入門」(伊藤茂夫著)に書かれていた因果関係についての次の記載を読んで、感覚が変わった(Fargoの件にしても、感覚なんて本当にあてにならない)。

AがBに机を10万円で売った。
2011年6月30日までに引き渡すことになっていたが、当日を経過しても、その引き渡しはなかった。「そのために」、
当日、転売先(代金12万円)に引き渡すことができなかった。「そのために」、
Cからその転売契約を解除された。「そのために」、
BはAの債務不履行によって、2万円の得ることができたはずの利益を失った。
そこで、BはAに対して、損害賠償として2万円の支払いを求める
というケースを考えてみよう。

ここで、上記の「そのために」という部分が因果関係を表現している記述である。ここを何らかの事実で置き換えて記述しようとしても不可能である。

先行する事実(Bに引き渡しがなかったこと)と、後行する事実(Bが引き渡せなかったこと)とは、それぞれ事実として記述することはできるが、「そのために」という部分は、上記の両事実の間に、原因・結果の関係があるかを、事実に関する法則(経験則)に照らして判断して、そうした原因・結果の関係があるといえると考えた場合に用いる表現である。すなわち、「そのために」という因果関係をあらわす記述は、事実ではなく法的判断(評価)の結果を表している記述であるといわなければならない*2

  • 時系列に並べられた事実というのは、必ずしもその前後に書かれた事実が、原因と結果の関係になるわけではない。でも、そういう意識でもう一度、教科書にある事実の概要を見てみると、「そのために」を加えられる部分が多いことにも気づく。「前の事実の存在が前提となって、後の事実が発生する」という「文と文の関係性」が、時系列の中にも見出せるなら、そこはアウトラインの出番。つまり、そこが段差をつける箇所、ということ。

  • アウトライン化した文章が記憶しやすいのは、この「文と文の関係性」が一目で感覚的に分かるからなんだろうな。アウトラインとは「接続詞」のカタチでもある。

  • 本当は、ロジックチャートを書けるアウトライナーが出来てくれたら言うことないんだけどな。既存のアウトライナーのように文章全体を縦に展開してくのではなくて、左から右という横方向へ展開していく。書き始めるのは、一番左のカラムから。それを組み合わせて、そこから新たに導き出せる主張を二番目のカラムに書く。そして、それを組み合わせて、そこから導き出せる主張を三番目のカラムに書く。これを続けていくうちに、主張がだんだんと収束していき、一番右のカラムに書く最後の一文が結論になる。

  • これを発表するときは、持ち時間に応じて話すカラムを選べばいい。右から左にいくにつれて話す内容は細かくなっていく。だから、一言でまとめたいときには、一番右のカラムに書かれた結論を言えばいい。かいつまんで要約したいときは、右から2番目か3番目あたりのカラムを選んで、そのカラムを縦に話していけばいい、とかね。

関連リンク

(記憶+想起→表現):ダイアグラム→アウトライナー→ドキュメント - LawDesiGn

*1:omni outlinerで、任意の項目にのみ背景に色をつける、ということはできないのかなー ( ˘•ω•˘ ).。oஇ

*2:「因果関係を表す記述は事実の記載ではない」という見解について、本書では「因果関係(原因結果の関係)の問題について、私見は、従来の普通の考え方とやや異なっている。こうした点についての学習が、法的思考の習得のために重要であると考えるので簡単に触れておく。」と記載されている。