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There is nothing to writing. All you do is to sit down at typewriter, and bleed. - Ernest Hemingway

法律家の事件処理とアウトライナーの活用

15:35 「法情報学ーネットワーク時代の法学入門」(加賀山茂・松浦好治著)を読んでいる。

法情報学―ネットワーク時代の法学入門

法情報学―ネットワーク時代の法学入門

(画像がないのががっかりですが)この本は、ネットワーク時代において法律家がコンピュータを最大限に利用して事件処理を行うためのガイドブックである。

第2章では、弁護士が受任した、いじめによる自殺の案件を例に、事実の整理と分析作業について詳細に解説がなされている。

特に、関連判例をデータベースにより収集したのち、本事件と類似する事案の最高裁判決について、事実の部分のみをそっくり当該相談に係る事実におきかえてみる、という方法は具体的で有益だった。

すなわち、最高裁で認められた判例法理が当該事件にも妥当するといえるためには、その判例法理が前提としている事実関係と当該相談における事実関係の間に、本質的な類似性が認められなければならない。

この類似性の検討方法の一つとして、判決文中の事実記載を、本件相談の事実にそっくり置き換えてみてもなお、その判例法理が本件相談において判例と同様の結論を導く根拠として説得力を持つか、説得力が足りない場合は、いかなる事実を付加すれば十分な説得力を獲得するかを検証する方法が紹介されている。

これは、判例学習において、判例の射程を考える上で役に立つと感じました。判例の結論は常に特定事案の解決という制約があります。そのため、その特定の事案において何が「重要な事実」(それが変化することにより結論が変わりうる事実)と判断されているのかを考えること、それが判例の射程を考えることだという点を改めて認識できたので有益でした。

中でも段差ラ部として一押しの点は、第4章「議論の構築」の章で書かれている訴状の分析手法。本書では、訴状の文章を単文ごとに改行し、一文一文について検討メモを付加していく手法が紹介されています。

これは、個人的にいつも行っているアウトライナー読書と同じやり方です。同じような文章検討の仕方を紹介している書籍というのを見たのは初めてだったので段差ラ部としては嬉しい限り。

更に第5章では、論文の設計図を引く手順として、まず200字程度のメッセージを書くこと、そして、そのメッセージを主語・述語を持つ単文の形で箇条書きにし、各単文に根拠や背景を付け加えて、1000字程度のシナリオを作ることを勧めている。

その際、接続詞を使って文章の流れを明確にすることも重要であると指摘されている。

この書き方は、Happy Outlining!のこちらの記事で、Tak.さんも「Writing in Process」として紹介されているので、ご参照下さい。

16:01 本書では、これらの方法論を実践する道具としてアウトラインプロセッサが紹介されている。著者もアウトライナーを愛用している方のよう。なお、付属のCD-ROMには2ペイン式のStory Editorというフリーソフトも収録されています。

法律学習者の方にはぜひおすすめしたい本です。 そして、是非段差ラ部部員に☺!