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There is nothing to writing. All you do is to sit down at typewriter, and bleed. - Ernest Hemingway

「社会契約論−ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ」(重田園江著)

社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)

社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)


人と人がうまくやっていくってどうしたらいいんだろう?
人間って利己的だから、そのまま放置してたんじゃ社会秩序もへったくれもあったものじゃない。でもね、利己的な心は抑えて利他的になるよう努力しよう、そんなお題目はもう聞き飽きた。だって、人間って利己的にできてるんだもの。それでも互いに殺し合わずそれなりに秩序を形成してやってくためにはどうしたらいいのか。
その一つのヒントとなるのが、この本。

人と人が殺し合う戦争状態からいつ、どうやって人は自ら武器を置く決断ができたのか。戦争状態の中、自分が武器を置けばいつ他人に殺されるやも分からない。そんな状況でもなお戦争状態を解消するために、人はどうすれば相手を信用し武装解除することができるのか。

国家形成の過程というのは、まさにこの囚人のジレンマ克服の過程といえる。
社会契約論は、自然状態から国家形成に至るプロセスを説明する一つの方法。国家や秩序というと大上段ではあるけれど、国家形成のプロセスを学ぶことはそのまま人間関係を学ぶことでもあるよね。


社会契約論のタイトルにロックがなくヒュームが書かれているのに興味を引かれて購入@丸善
ヒュームといえば、ロック、ヒューム、バークリの三大イギリス経験論者の一人。
バークリといえば…
ソフィーの世界を読んだことある人なら、思い出すだろう。ソフィーが自己の存在に隠された真実を知る重要な場面で出てくる哲学者だから。

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

ロックが抜け落ちてるところが他の社会契約論の本と違う面白い特徴だけど、著者はその理由をこう説明する。

この本でロックを取り上げることができない理由を、簡単に述べておく。
ジョン・ロック(John Locke, 1632-1704)の社会契約論では、「信託 trust」という考え方が鍵になる。

ロックの思想に「信託を受ける政府」という考えがある以上、もう一方に、「信託を与える者」を想定しないわけにはいかない。そして、この信託を与える者は、…個人が生まれ、死に、構成メンバー自体が変わっても、具体的な場所で歴史的な実在として生きつづける集合体としての「人民」に当たる…(この集合体が)ロックの契約論にとって不可欠の構成要素なのだ。

ホッブズとルソーが一回限りの契約を強調するのは、彼らが契約以前の人間社会にあるべき集合性を認めることができないからだ。ロックの社会契約にはこの特徴はない。
この本での私の立場は、ホッブズやルソーに見られる一回限りの契約こそ社会契約論の革新性と近代性の源泉であるというものなので、その中にロックを含めて論じることができなかった。

p280 注(1)より

国家という秩序を成立させる以前の自然状態においては、人と人とが集合体をつくることなんて観念できない、とする著者の考え。
これはすんなり腑に落ちる。そもそも、集合体ができる時点でそこに一定の秩序が既に存在するはず。

ん?これは日本の歴史とも関係しそうね。
農耕民族であったために自然発生的に人が共同体を形成してきた日本と、キリスト教と王政によって自由を制限されてきた諸外国と。
網野善彦のこれ↓読んだけど、これだけじゃいまいち分からなかったよねー。年末にもっかいぺらぺらしてみたい。

日本とは何か  日本の歴史〈00〉

日本とは何か 日本の歴史〈00〉

あ、で、ロックね。
その後、本屋でみつけた「なめらかな社会とその敵」↓をぱらぱら見て、たぶん、ロックが「集合性」を強調するのは、国家権力の正当性と正統性の根拠を(個人の意思ではない)「人民」と人権から基礎づけることにあるんだろうな…と思った。もうちょっと考えたい。次はこの本読みたい。

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵


中途半端感満載だけど、おなかすいてきた。

またね。