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There is nothing to writing. All you do is to sit down at typewriter, and bleed. - Ernest Hemingway

人間はどこまで動物か−未熟児とストロベリーショートケイクス

「捨てられない子ども」だった。 - いつか電池がきれるまで

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私はモノを捨てるのが大好きだ。

捨てていかなければ、何が捨てられないかが分からない。

どんどん捨てることで、それでも捨てられないものが分かる。

この捨てられない、わずかに手に残ってくれる本当に大切なものを大切にしたい。

私の体内リソースは小さすぎて、多くのものは抱えられない。

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私は980gで生まれた超未熟児でした。

 Preterm birth - Wikipedia, the free encyclopedia

Risk factors

As the cause of labor still remains elusive, the exact cause of preterm birth is also unsolved. In fact, the cause of 50% of preterm births is never determined. Labor is a complex process involving many factors. Four different pathways have been identified that can result in preterm birth and have considerable evidence: precocious fetal endocrine activation, uterine overdistension (placental abruption), decidual bleeding, and intrauterine inflammation/infection.  Activation of one or more of these pathways may happen gradually over weeks, even months.  From a practical point a number of factors have been identified that are associated with preterm birth, however, an association does not establish causality.

未熟児の正確な原因はまだ何も明らかにされていない、ということが分かる。

生まれた時点では、死んだ方がよかったんですよ、そう看護師の方に言われたそうだけど、NICUの先生方の力の結集によって助けて頂いた。ただ、視力は諦めて下さい、そう言われたとは聞いた。

未熟児網膜症という疾病がある。

未熟児網膜症 - Wikipedia

少なくない数の未熟児がこの病気によって視力を失う。

それでも、私は視力も残った。ただただ運が良かったのだと思う。

先生方の力と運に感謝して、日々を楽しんで生きていきたい。

こないだ、平成25年9月3日付で、国立生育医療研究センターから出たプレスリリースを見つけました。重症の未熟児網膜症でも手術によって良好な視力の改善に成功した、という内容です。

http://www.ncchd.go.jp/center/information/topic/images/130903-1.pdf

未熟児網膜症は小児失明原因の第一位であり 35%を占めています。

ことに体重が極端に少ない未熟児に起こる重症型(厚生省分類Ⅱ型/国際分類 Aggressive posterior ROP)は失明の可能性が高く、きわめて難治でした。国立成育医療研究センター病院眼科・研究所細胞医療研究室の東 範行医長・室長の研究グループは、この重症未熟児網膜症に対する新しい手術法を 2004 年に開発し、93%(全治癒 81%、部分治癒 12%)で網膜症の悪化を抑えることができることを明らかにしました。

 医学の進歩というのは素晴らしい、と心から思う。 

そして、同時にこの映画のラストシーンを思い出した。

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ストロベリーショートケイクス [DVD]

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このラストシーンでは、好きな男性の子どもを妊娠した女性が、海岸で煙草を吸っている。

彼女はデリヘル嬢として日々働いてきた。マンションを買ってその5階以上に住むのが目的。5階以上からでないと窓から飛び降りても死ねないから、というのがその理由。

映画の中に出てくるデリヘルを頼む男たちについては、その腐った性的嗜好が垣間見える。女性の体を物として扱うことでしか自分の何かを解消できない。どこまでも哀れな人間の姿。

それでもこういう過酷な状況で懸命に生きるデリヘル嬢が好きだ。…そう思ったのに、

最後の煙草を吸ってるシーン。あれを見て本当に幻滅した。

この女性にはずっと想い続けている男性がいる。この想いが報われることはないのだけど、一度、夜を共にできてその男性の子どもを身ごもることができる。にも関わらず、妊娠中に煙草を吸わせる、あのラストシーン。

最後に彼女をそういう風に描いたことに、何か意図があると思うのは私だけだろうか。生まれてくる子どもに何かの障害が残らないことを祈るばかり。

で、話は何だっけ、そう未熟児。

「努力する人間になってはいけない」(芦田宏直著)にこのような記述がありました。

普通胎児がこの世に生まれてくるのはお母さんのお腹に宿って十ヵ月と十日(とつきとおか)かかると言われていますが、それだけお母さんのお腹にいても、それでも人間は一年以上早産なのだとポルトマンは言いました。

人間は脳だけが過剰に大きくなったため、母体の骨盤がその大きさに耐えられない(通過できない)。だから、脳が小さいうちに、一年くらい早産で生まれてくるというものです。つまり、人間はみんな未熟児で生まれてくるわけです。

一年分は、母胎の中で生理的に育つのではなくて、下界に飛び出て、社会的な過程の中で育つとポルトマンは考えました。早産した分、人間の子供は、さまざまなことを生理的に学ぶのではなくて社会的に学ぶ。そこにこそポルトマンは人間社会が自然的環境を超えて、文明を持ったり、文化を有したりする根源を見たのです。

 

P68より引用

 アドルフ・ポルトマンという動物学者だそうです。

人間はどこまで動物か――新しい人間像のために (岩波新書)

人間はどこまで動物か――新しい人間像のために (岩波新書)

 

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