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続・補助参加の利益−百選A39事件のあてはめを考える

引き続き、悩んでおります。悩みの多い年頃。
こないだのエントリ、補助参加の利益−訴訟の結果「利害関係」の範囲について。
その範囲をどうやってはっきりさせてよいものやら。


まず、補助参加の利益の範囲を、参加的効力の範囲から枠づけることってできそうだよね。

参加的効力の趣旨って敗訴責任の分担。だから、敗訴責任を分担する関係にない者に補助参加の利益を認める必要はない気がするのね。
でも、敗訴責任の分担って何よ?

敗訴責任っていうからには、訴訟で負けた結果何らかの債務を負担することになる関係だろう、と。分担っていうからには、ともに訴訟追行した者同士だろう、と。

そうするとね、主債務者への履行請求訴訟に保証人の参加を認めるのって変じゃね?って思えてくる。主債務者負けても、その後、保証人が主債務者に対して何らかの債務を負担するわけじゃないよね。とすると、主債務者と保証人の間の後訴というのは考えられないので、たとえ保証人の参加を認めたところで参加的効力は問題にならないことになる。なのに、保証人に補助参加の利益を認める見解が多い気がするのはなぜ?気のせい?

保証人が主債務者の訴訟に参加するメリットって何だろう、保証人が今後備えなきゃいけないと思ってる訴訟は何だろうっていうと、債権者からの保証債務の履行請求訴訟だよね。主債務者が勝ってくれれば、後の債権者からの保証債務の履行請求訴訟において、保証人は主債務の存在を否認できる。

つまり、保証人の補助参加は「敗訴責任の分担」とは全く無関係だよ?

補助参加の利益よ、どこへゆく?



同じ疑問は、民訴百選アペンディクス39事件にもあるのでした。

事案はこう。YZ間で自動車事故があり通行人Xがこれに巻き込まれてケガをした。そこで、XはYZを共同被告として損害賠償請求訴訟を提起した。一審判決は、Zの過失のみ認めてYの過失を認めず、XのZに対する請求のみ認容、Yに対する請求は棄却。Zは自己に対する請求認容判決に対しては控訴せずXのZに対する請求認容判決は確定。しかし、Zは求償権確保のためXに補助参加し、一審判決に控訴しなかったXに代わり、XのYに対する損害賠償請求の認容判決を求めて控訴した。
さて、この控訴は有効なの?Zに補助参加の利益は認められるのかっていう問題。

ぼんやりと考えるとだな、XのYに対する損害賠償請求権が認められないという判決がでると、ZはYに求償できずに1人でお金払わなきゃならなくなって、それはいかにも不利益そうだという感じはする。でも、XのZに対する損害賠償請求権の存在については既にこれを認めた一審判決が確定している*1。とすると、やっぱりZとXの間で後訴というのは考えられないので、参加的効力は問題にならないじゃないかー!

で、更なる問題として、42条の文言にどうやってあてはめるのか、と。

XのYに対する損害賠償請求権の不存在=YのXに対する損害賠償債務の不存在という訴訟物に対する判断(「訴訟の結果」)→この訴訟の結果は、ZのYに対する求償権の不存在という、参加人Zにとって不利益な判断の論理的前提になっている(「利害関係」)。
これってあてはめになってるのか、なってないのかわからない。これで別にいい気もするけど、求償権の不存在といえるためには、求償権の発生原因事実がないって言わないと、あてはめにならない気持ちもする。
そうね、なんとか権だのなんとか債務だのっていうのは法的評価だから、その存在・不存在を判断するには事実を検討しないとだめだよね。「〜権」自体が、他人の権利の存否へ影響するのは、判決効が拡張される場合だけ。たぶん。

これについては、本判決の判例評釈にこんな解説がある。要約するとこんな感じ。

訴訟物たるX→Yの損害賠償請求権の存否の判断は、Z→Y間の求償訴訟へ具体的にどのような影響を与えるか。
①X敗訴の場合であっても、ZのYに対する求償権の不存在が確定されたことにはならない。なぜなら、求償権の有無がこの訴訟の訴訟物ではないから。
②X勝訴の場合であっても、ZのYに対する求償権の存在が確定されたことにはならない。なぜなら、求償権の有無がこの訴訟の訴訟物ではないから。


ただ、本判決を後訴の証拠として提出することによって、本判決で認定された事実判決理由中の判断)、特にYの損害賠償債務の存否に関して、後訴のZY間の求償訴訟に事実上の影響を与えることは十分考えられる。


確かに、被参加人X勝訴の判決がなされれば、補助参加人ZのYに対する求償権の行使は事実上容易になることは予想できる。①本訴訟の損害賠償請求権を発生させた事実と、②求償権行使のために法定に提出される事実とは共通しているので、一方で否定されたことが、他方で肯定されるということはかなり難しい。


ジュリスト642号126頁参照

そうなのよ。まさにこの赤字のとこ。この事実が具体的になんなのか示してほしいのに、あなたはつれなすぎて何にも説明してくれないので、しょーがないから私が考えるしかないじゃない(怒!
判例評釈でも指摘してるけど「特にYの損害賠償債務の存否に関して」って、要はYの過失に該当する具体的事実のことよね。これが①と②で共通してる、と。

でもこれ、ちゃんと説明しようとするとできない。
まず、②ZのYに対する求償権発生の主要事実ってなによ?共同不法行為の場合の加害者間の求償権って明文の規定ないよねー…。とすると、不当利得でいいのか?
不当利得(民法703条)の要件は、i)利得 ii)損失 iii)因果関係 iv)法律上の原因がないこと。YのXに対する損害賠償債務が不存在ならば、ZのXに対する賠償額全額の支払もYの債務の支払とはいえず、Yの利得があるとはいえない。そこで、XのYに対する損害賠償請求権の発生障害事実又は消滅事実、あ、違うね、共同不法行為だから発生原因事実?、ごにょごにょ、を検討すると、ごにょごにょ、だから、Yの過失に該当する具体的事実が共通しているんですね キリッ)。

で、ここまできて、はたと思うことはですね、
一生懸命、前訴が後訴に事実上影響する共通の事実を探しているわけですけれども、これって「訴訟の結果」なんですか?
訴訟の結果って訴訟物に対する存否じゃなかったんでしたっけ?

もー、いやー


はー、わたしつかれました。
最後に、今回のエントリのまとめ。

Xがタクシー乗車中、タクシーがバスと衝突しXはケガをした。そこで、Xはタクシー運転手Yに対して損害賠償請求訴訟を提起した。さて、バスの運転手ZはYに手を貸すべきか、それともXに手を貸すべきか。自分の利益を一番守れるのは、どちらの方法でしょう?

俺ら、過失ある同士仲間だぜ。
いやいや、やめてくれよ。俺には過失ないし。
はー

*1:一審判決が確定していない場合は、ZX間の後訴って考えられる?